2015年11月30日月曜日

月刊アフリカニュースを読む。2

http://ameblo.jp/seyarumi/entry-10118481487.html
11月のエントリーも今日で最後になるのだが、どうもアフリカの話が少ない。新聞では、シリア難民やパリのテロの話などが国際面の紙面を占めていることが多く、最近では、ローマ法皇がケニアを訪問して、平和を訴えたというニュースが載っていたくらいである。ついつい、私も一神教の研究の立場からのエントリーが増えてしまった。

最後くらい、アフリカの話を書きたい。今月の月刊アフリカニュースから、オムニバス的にピックアップしてみたいと思う。
http://www.africasociety.or.jp/africanews/africanews_no37.pdf

●アフリカの広大な土地の買い占めは神話に過ぎない。
インドの会社がエチオピアで30万haを入手、韓国の多国籍企業がマダガスカルの耕作可能な土地の半分近くを無償で入手、ドバイの王族がタンザニアで15万haのサファリパークを購入した。これらの数字を合計すると、最近国際的な投資家はイギリス、フランス、ドイツの農地を合わせたと同規模の土地を買い上げたことになる。2008年頃から、食料価格の上昇、アジアの食糧需要の拡大、バイオ燃料への需要増加等と時を同じくして、大規模な土地の売買が報じられている。しかし、多くの数字は信頼できないし、関係政府も公表していない。所有権も不明である。外国所有の土地もそれほど開墾されていない。神話がまかり通っている。

●アフリカの中間層、少数であり、低所得層の差は拡大か?
経済成長と都市化と共に中間層が増加している。民主的な政権の下で増加が著しい。Pew Research Centerは、1日$10~20の所得層を中間層と定義し、アフリカの人口の6%を中間層とし、90%は1日$10以下であると報告している。南アを除くと2004年から2014年の間に、(中間層は)4.4%から6.2%に増加したと推測している。

●ケニアの経済成長の成果は、草の根の人々と共有されなければならない。
最新の世銀報告によれば、ケニアの成長率は年平均6.2%で、サブ=サハラ・アフリカで最高の成長率である。さらなる成長は、外国投資如何による。しかし、平均的な市民は、食糧不足、清潔な飲み水不足、医療品の不足、繰り返されるストライキによる保健医療の欠陥等に苦しんでいる。市民の生活の質の向上が強く望まれる。

…これらの記事は、決してハッピーな話ではない。だが、徐々にだがアフリカの開発が好転しているように見える。アフリカの土地の開発の話は面白い。たしかに、ザンビアなどで外国企業による土地購入の事実はあるようで、小農の生活を脅かしているのだが、全てが事実ではないぞ、というわけだ。ちょっと好意的に見れば、アフリカへの投資熱の表れといえる。アフリカ2(中間層)の話も、この数値をどう見るかで変わってくる。少なくとも増加傾向にあるわけで、決してアンハッピーな記事ではない。ケニアの話も同様である。

中東とヨーロッパの問題が、上昇傾向にあるアフリカの開発に微妙な影を落としているように私は感じている。これからも注視していきたいところだ。今日の画像は、ケニアで画像検索したら、瀬谷さんというコートジボワールで国連PKOで仕事をされている方のブログの画像が目に入った故。空港で撮ったオミヤゲの写真らしい。これ、いいなあ。欲しいなあ。

2015年11月29日日曜日

JAXAの超音速機研究開発

http://fuzz.gulu2.net/archives/7051.html
TVでこれまた偶然だが、JAXAの超音速機開発の話をやっていた。昔、超音速機・コンコルドがロンドン~ニューヨーク間を飛んでいた。実は、昔々、ニューヨークのケネディ空港から市内に向かうバスの窓から、コンコルドを見たことがある。ニューヨーク一人旅の幸先の良さに感激したのを覚えている。ところが、このコンコルド、凄い衝撃音を発するので、飛べなくなってしまったのだった。この衝撃音、ソニックブームと言って、音速を超えるとN字型の波形で地上にぶつかるらしい。

物理は極めて苦手だが、TVでは、わかりやすい解説をしてくれた。後部機体にあえてさらに波を作るようにすると、とがったN字型ではなくゆるやかなN字型になるそうである。凄いな。スウェーデン北部で、この理論を実験するJAXAスタッフを、この番組は長期間(4年間)追いかけていたようだ。実験は計3回。気球で高々度まで逆さの機体を上げ、落下させ、機体に内蔵させたコンピュータで制御、水平飛行に移し音速を超えさせる。この時のソニックブームを測定するわけだ。一度目は、機体が不安定になり失敗。2度目は天候不順。3度目にやっと実験に成功する。

結局、この機体のソニックブームは、コンコルドの1/4程度だった。大成功である.。もちろん、開発はこれからだし、おそらく50人乗り程度の旅客機になるだろうとのこと。とはいえ、飛行時間の短縮は半分とはいかないが、それに近くなるとのこと。

MRJが、ようやく初飛行したばかりだが、この超音速機研究開発、頑張って欲しいものだ。おそらく実用化させるのは、かなり先のことになるだろうし、客席50席なら、エコノミー席などあるわけがないので乗れそうにないが…。(笑)

蛇足かもしれないが、こういうJAXAの研究に政府は金を惜しむべきではない。国益とか、経済効率とか、そういう話ではない。宇宙開発とともに、人類益的な研究であると私は思うのだ。

トルコとロシアの問題について

http://albore.hatenablog.com/
entry/2015/10/06/085958
先週の話である。ある若い先生から、トルコがロシア軍機を撃墜した件について、何故か教えて欲しいと言われた。制限時間は5分…さすがに難しい。それで、30分ほどかけて、一気にワードでメモしたものを渡した。メモを読んでもらってもわかってもらえたかどうか…。この土日、様々なワンドショーで、様々なコメンテーターが説明しているが、私ならこう言う、ということをエントリーしておきたい。

1.時系列的な理解
①トルコとロシアは、クリミア戦争などの歴史がありそもそも仲が悪い。
②旧ソ連領にはトルコ系民族が多く居住しいる国があり、トルコは同胞意識をもっている。
③WWⅠ以後サイクスピコ協定で、旧オスマン=トルコ帝国は分割された。
  シリアは、フランスの支配下に入り、被差別少数派の「アラウィ派」(輪廻思想をもつイスラムだが、シーア派の崇拝するアリーを重視している。一応シーア派に分類されている。)に支配権を与えた。多数派のスンニー派なら宗主国に立てつかないだろうという思惑っである。現アサ度大統領の父親は、スンニー派をかなり弾圧している。
④WWⅡ以降、イスラムに領域国民国家が多く生まれた。産油国などは君主制のもと国民国家化した。共和制の国も大統領の権限が強く、専制的である。
⑤アラブの春がチュニジアから始まり、シリアにも飛び火した。イスラームは神に服従する神定法の世界なので、人定法の民主主義とはなじまない。アラブの春は結局チュニジア以外では失敗した。

2.イラクにおけるISの誕生
①アメリカのイラク侵攻で、スンニー派のバース党とフセインは除かれ、シーア派が政権を握る。このシーア派に反対するスンニー派の伝統的復古主義者とテクノクラートのバース党の残党が組んだのがIS。彼らはムハンマドの後継者である「カリフ」を名乗る。(オスマン帝国崩壊以来、この地位は空白だった。)カリフには政治的権力はないが、カリフに忠誠を誓うことで、その支配下に属することになる。(中東やアフリカでISを名乗る組織が出てくるのは、そういう理由)故に、イスラムの国(神の法≠コーランとハディースを唯一絶対の法とする、カリフに忠誠を誓う人々が住む領域で、行政などは各自が神の法に従うのみ。)の地域拡大に走る事になる。さらにシリアに拡大したことは重要な意味がある。すなわち、世界が認める欧米の国家の基本概念・領域国民国家を越えて、ISが存在するという、普遍的と思われている欧米の概念を脱構築したからである。
②アルカイダは、主に欧米先進国への攻撃を主目的としているイスラム復古主義者であるが、ISは実際にカリフ制のもとにイスラムの理想を実現しようとしている。ISの主なる敵は、領域国民国家に成り下がった(という見方をしている)イスラムの国々であり、さらにカリフ制を認めないシーア派(イランなど)である。

3.欧米とロシア・トルコのスタンス
①欧米は、ISによりジャーナリストなどが殺害され、さらにISが先進国からも兵士をリクルートしていることに危機感をもっていた。今回のようなパリのテロは、本来アルカイダのテリトリーであるが、これからもISのカリフに忠誠を誓った組織や個人が行う可能性は十分にありうる。
②ロシアは、欧米と異なり、キリスト教国でありながら、いまだに帝国といったほうがわかりやすい。新帝国主義という概念があるが、グローバル化の中で国益を最大限拡大しようとしている。したがって、欧米のようなシリアの民主化という理念的な問題より、シリアにあるロシア軍港の権益を守ることが重要である。したがって、アサド政権が、いかに人道的に問題があることを行おうと支援することの弊害にならない。(このあたりは中国と同様である。)
③トルコは、イスラム国でありながら、最も早く政教分離した領域国民国家である。民主主義を是としている。(現大統領は、かなりイスラム化政策を進めていて、旧ソ連のトルコ系の共和国、~スタンと称している国々と連携を図ろうとしている。:これはユーラシア構想で覇権拡大を狙うロシアとは相容れない。)しかもNATO加盟国であるが、EUには加盟させてもらえないという微妙な立場にある。国内には、イラン・イラクにも居住するクルド人問題を抱えている。クルド人は、トルコ系ではなく、WWⅡ後、結局独立できなかった民族で、今なお独立への意志は強い。(ロシアにおけるチェチェン人の立場に似ている。)

4.シリアの構図
①最も大きな構図 IS 対 領域国民国家群
②アサド政権をめぐる構図 アサド+ロシア+イラン 対 反政府勢力+欧米+トルコ 対 IS
③小さな構図  ロシアは、反シリア政府勢力下の義勇兵チェチェンを掃討したい。一方、トルコは、クルド勢力を掃討したい。

5.トルコとロシアの対立
 こうしてみると、トルコとロシアは4.の①では味方だが、4.の②では必ずしも味方ではない。撃墜事件は、ロシアがトルコの支援する反政府勢力を空爆した際=4.②に起こったと推測される。トルコとロシアが実際、戦争になることは考えにくい。経済的なデメリットが大きすぎ、すぐにグローバル化し、世界的経済混乱を招くからである。戦争は、そういうデメリットの少ない周縁(途上国における内戦など)以外は、もうありえないのが現状。   

…と、短くしたつもりが、メモというには膨大なものになってしまったのだった。(笑)  

2015年11月28日土曜日

毎日 テロを超える「贈り物」

毎日の今日の朝刊に作家の柳田邦男氏の「深呼吸」というコラムが載っていた。パリの同時多発テロで妻を亡くしたジャーナリストのアントワーヌ・レリスさんが、フェイスブックに投稿したテロリストへのメッセージが大きな反響を呼んでいることを受けたものだ。

「怒りで憎しみに応えるのは、君たちと同じ無知に屈することになる。」「君たちを恨まない、君たちに憎しみの贈り物をあげない。」といった確固とした理性を発揮し、反報復の意思を表明したものだ。さらに「(残された)幼い息子を殺し合いに走らないまろやかな人間として成長させることのほうが大事。」だと。

このあたり、フランス・インテリがもつ理性主義の伝統が生きていると私も強く感じる。実際、湾岸戦争に始まる新たな報復主義に反対するフランス人は多かった。京大の山村信一教授が「憲法9条の思想水脈」の中で国策としての(侵略)戦争を排除する非戦思想は、17世紀から18世紀に生まれ、フランス革命による1791年憲法で具体的にうたわれおり、思想史の中で醸成されてきたものだと明らかにしている。レリスさんの反報復主義のメッセージは、このような思想史の水脈上にあるという話だ。

…こういうフランスの理性主義もまた大いに賛嘆すべきものだと思う。

…このコラムで、私が特に印象に残ったのは、柳田氏が翻訳したというフランスのイラストレーターの絵本の話だ。湾岸戦争直後に制作されたもので、「ヤクーバとライオン」シリーズの「Ⅰ勇気」「Ⅱ信頼」である。アフリカの奥地の村では、成人の日を迎える若者はライオンと1人で戦い倒せば、名誉ある戦士として賞賛され隊列に加えられる。ヤクーバは、やりを突きたてようとするライオンから問われる。「わしを殺すことが本当の名誉なのか。もうひとつの道がある。殺さないことだ。そのとき、ほんとうに気高い心をもつ人間になれる。どちらを選ぶのか。」結局ヤクーバはライオンを殺さず帰り、村八分に等しい扱いを受ける。フランスにおける非戦思想のひろがりを示している作品だという。

…この話、私は少しだけひっかかるのだ。おそらくマサイを題材にしていると思われる。もちろん絵本だからフィクションであるのだが、マサイがライオンを倒すのは、遊牧民として家畜を守るための必要な技の習得である。そのあたりは、絵本に書かれているのだろうかと思ってしまう。ここに書かれているフランスの非戦の思想は大変結構なものだが、ヨーロッパ優位の高慢さを感じてしまうのだ。レヴィ=ストロース言う、「西洋中心主義への楔」を打っておきたい。

2015年11月27日金曜日

ホロコースト人権学習の感想

水曜日の人権学習の感想を、試験前なのだが時間に余裕があるクラスの世界史の授業を使って、3クラスで、10分ほどの短時間でで書いてもらった。

最も印象に残ったのは、ビルケナウでの凄惨な状況を集約した「灰の記憶」の映像(6分ほど)と、アウシュビッツの壁に残った爪痕の画像であったようだ。多くの生徒が、ホロコースト関係の画像を初めて見たようで、かなり大きな衝撃を受けたことがわかった。

私もそうだったが、同じ人間がこのようなことができるのか、という感想を述べる生徒も多かったし、「道具的理性」を教えた関係で、自分がドイツ人であったなら、命令されればやっていたかもしれない、という思索をしたものもあった。

「本が焼かれたら、次に焼かれるのは人間である。」という、リルケの言葉も強く印象に残っているようだ。私が強調した今もホロコーストと同様の差別や人権侵害が行なわれているということも、よく理解してくれているようだ。それは、同時に、大きな気づきであったようだ。もちろん、生徒によって差はあるけれど、自分で調べていきたいとか、もっと勉強していかなくてはならないという、嬉しい感想も多かった。私としては、それで十分である。

今日のの画像は、パワーポイント・最後の1枚。アウシュビッツのガス室の爪痕の画像が、アニメーションで消え、シャロームの文字が浮かぶ。

2015年11月26日木曜日

新オリジナルゲームの実践(4)

紛争はCD連合国の勝利
いよいよ、新ゲームの実践第4回目である。前回、結局紛争に突入することになってしまった。まずは、C国対B国、D国対B国にA国が助太刀するという状況を整理した。少し時間を設定し論議のすえ、C・D連合国対A・B連合国で、資金を私に渡すことにで皆納得した。資金の比率は12対7。この人数でじゃんけんを行うことになった。勝ち抜き戦である。

A国の司令塔・K君は、「CDは、おそらく全財産を出したのたろうが、絶対アホや。」と呟いた。A国は資金をそんなにださなかった。「あまりメリットがないのです。」うむ。正しい。紛争をさけるため、そういうルールにしてあることを見抜いている。さすが、現在1位の国だ。しかし追い詰められているC・D国は、かなり盛り上がっている。勝つぞぉ。とテンションが高い。

で、じゃんけんの戦いが始まった。予想どうり、数に有利なCD連合国が勝利した。さあ、問題はサイコロの出目である。みんなが注目する中、出た数字は「2」。C・D国とも、20ずつB国から生産物の権利をとることになった。

彼らが選んだのは「野菜20」と「野菜20」だった。私はてっきり、次の回に向けて「機械」や「繊維製品」を取ると思っていた。残った時間で、第5回目を行うことにした。「?」全く動きがない。ABも、CDも互いを批判しているだけだ。貿易が成立しないのだ。

なぜなら、「機械と繊維」はABが独占しており、CDは、「野菜」を独占している。しかもCDは資金ゼロである。CDが野菜を売らないと言い張っているかぎり、ABの両国とも、いくら資金があっても条件をクリアできないわけだ。完全に保護貿易化した世界となった。

CD連合国は、少ない紛争の利益をだったが、「野菜」を独占することで、痛み分けに持ち込んだわけだ。なかなかの勝負師である。

次の時間に、比較優位と保護貿易・自由貿易について語ろうと思う。想定外の展開になったが、意外とよく理解できるのではないかなあと思ったりする。

2015年11月25日水曜日

三島の45回忌に「葉隠入門」

朝、モーニングが休みなので日経をローソンで買い求めた。「春秋」で、今日が三島由紀夫の45回忌なのだということを知ったのだった。今でも中学1年の時の三島事件についてはよく覚えている。

その三島の座右の書は、「葉隠」だったのだという。その帯に惹かれて、三島の「葉隠入門」(新潮文庫・昭和58年4月25日発行)を買い求めた。久々に三島のレトリックに痺れながら読んでいる。まだ最初の方だが、三島はこう書いている。

当時この一冊は、戦時中にもてはやされたあらゆる本と同様に、大ざっぱに荒縄でひっくくられて、ごみだめの中へ捨てられた、いとうべき醜悪な、忘れ去らるべき汚らわしい本の一つと考えられていたからである。かくて「葉隠」は時代の闇の中で、初めてそのほんとうの光を放ち出した。

わたしが戦争中から「葉隠」に感じていたものは、かえってその時代になってありありとほんとうの意味を示しはじめた。これは自由を説いた書物なのである。これは情熱を説いた書物なのである。「武士道といふは、死ぬことと見付けたり」という有名な一句以外に「葉隠」をよく読んだことのない人は、いまだに、この本に忌まわしいファナティックなイメージを持っている。しかし、「武士道といふは、死ぬことと見付けたり」というそのその一句自体が、この本を象徴する逆説なのである。わたしはそこに、この本から生きる力を与えられる最大の理由を見出した。

…三島は、この「葉隠」、犬儒的な逆説ではなく、行動の知恵と決意がおのずと逆説を生んでいく、類のないふしぎな道徳書だと、さらに評論「小説家の休暇」の中で書いている。なかなか面白そうではないか。

…今日、例の「ホロコーストとは何だったか。」という、3年生の人権教育を実施した。実は、その直後に卒業アルバムの全体写真を撮るとのことで、生徒も担任団も、講堂から潮が引くように消えていった。片付けをしていた私は結局、生徒の感想を聞く機会を失ってしまったのだった。ただ、学年主任から、「(全体写真を撮る際)笑顔をつくるように。」と言っても、生徒がなかなか笑顔になれませんでした。と、「逆説」的な感想をいただいたのだった。重い話だったし、画像もかなりショックを受けたらしい。

2015年11月24日火曜日

日経 欧州の寛容の精神?

モスクが足りず路上で礼拝するパリのムスリム
http://blogs.yahoo.co.jp/stellar_mimiru/65307997.html
日経の「経済教室」、今朝は一橋大学の福富教授の「パリ同時テロが示すもの①」であった。パリ政治学院で国際関係学博士号をとった方らしい、フランスからの視線で書かれたものだ。

欧州のイスラム過激派によるテロの背景と混乱の原因を①欧州の寛容の精神をテロリストが逆手にとった。②欧州社会がイスラム教徒との融和につまづいたこと。③シリア問題への対応の遅れ。を挙げている。

フランスには、北アフリカから来たアラブ系移民が2世・3世を含め350万人以上、イスラム教徒は全体で450万人が生活しているとされ、移民政策は80年代以降フランスの重要課題となっている。トルコ系移民を始め500万人のイスラム教徒を抱えるドイツやパキスタン系移民を中心に270万人が住む英国でも国民融和は大きな課題である。欧州のアラブ系移民の増加は、各国政府が植民地統治時代から言語的障壁のない彼らを経済成長期に自動車など製造業を支える労働力として招いたことが始まりだった。だが、石油危機以降、経済が低迷するとアラブ系移民は離職を余儀なくされた。2世世代は、貧しさ故に十分な教育を受けられず、就職差別に苦しみ、アイデンティティを模索し続けることになった。

特にフランスは、共和国理念に同化を求める社会であり、多文化主義の英国や、歴史に対する反省から異なる政治信条に敬意を払う教育がなされているドイツとは異なる。その意味で、二重基準に翻弄された若者の苦悩は大きかった。特に、新保守主義・新自由主義の前サルコジ大統領時代、移民2世・3世の疎外感が増大した。

この後、福富氏はシリアへの対応の遅れを指摘する。2001年の国連の「干渉と国家主権に関する国際委員会」で決定された、保護する国際的責任が内政干渉に優先することを確認し、「ボーダーレスな内戦状態にある世界」に、フランスが介入すること(軍事攻撃)を擁護している。今回の事件を「文明の衝突」にしてはならない、テロは人類社会に対する挑戦とみなすべきである、と。また、EUは、シェンゲン協定を見直しすべきではない、さらに過激派があおる宗教戦争や極右勢力によるアラブ系住民の隔離をゆるしてはならない。時計の針を70年以上巻き戻すようなことになれば、それは欧州の死を意味する、寛容の精神を失って行き着いた先が「ホロコースト」だったことを、欧州諸国民は知っているはずだ、と結ばれている。

…うーん。極めてフランスからの視点だなあ、と思う。毎日の朝刊には、仏軍への入隊希望者が3倍にもおよんでいるのだという記事が載っていた。私は、このナショナリズムの高揚こそが怖い。そもそもシリア内戦の種(被差別の少数宗派「アラウィ派」のアサドの父に支配させた。)をまいたのは、フランスだ。ご都合主義に過ぎると私は思うのだ。アメリカも、各州議会でシリア難民受け入れ拒否が次々と行なわれている。70年前のナチス・ドイツからユダヤ人が難民化した時とと全く変わらない。

…私は、これはまさに文明の衝突だと思っている。神定法でアナーキズム的なスンニ派イスラム過激派対キリスト教の人定法で、領域国民国家の先進国&領域国民国家化した普通のスンニ派イスラム教徒の戦いである。ここにシーア派と、ロシアが絡んでぐちゃぐちゃになっているように感じている。ISが、カリフを宣言してしまったことは大きい。アナーキーに、領域国民国家を越えて、カリフに忠誠を誓う、貧困から先進国との闘争に参加する人々が無限に現れるのは自明の理である。

…勘違いして欲しくないが、私はテロを擁護しているわけではない。そういう風に見えると言っているだけだ。キリスト教的な人定法が普遍であり正義だとする欧米の立場以外にも、違う正義、神の正義を掲げる人々もいる、ということである。こういう異文化理解こそ、真の寛容の精神である。最大の問題解決は、やはり経済格差の是正であり、先進国の構造的暴力の解消であると私は思うのだが…。

2015年11月23日月曜日

パリのムスリム「共生への叫び」

http://mainichi.jp/shimen/news/20151120ddm001030189000c.html
TVで、こんな映像が流れていた。パリで、男性が目隠しをして立っている。彼の足元には、こう書いてある。「私はイスラム教徒です。人々は私をテロリストだと言います。もし、私を信じていただけるのなら、ハグしてください。」

そして、疑心暗鬼な観衆の中で、ハグしていく人々が現れる。私は、短い映像だったが、思わず涙した。いかにも、フランス的な品性にあふれた「共生への叫び」である。

フランスは、宗主国でありながらシリア難民には人気がない。多文化共生を国是としながら、経済格差が激しく、しかも政教分離政策で公立高校での女子生徒ののヒジャブ着用禁止など、イスラム教徒から見て、強い差別に繋がっていることが周知されている。要するに、多文化共生は、破綻の一歩手前に追い込まれているのだ。とはいえ、個人の自由を尊ぶことでは世界有数の歴史をもつ。このイスラム教徒の男性も、その個人一人ひとりに訴えかけているといえる。

YouTubeを調べてみたが、日本語によるサーチでは見つからなかったのが残念。

2015年11月22日日曜日

20年目のグッバイ・ボーイ

マチュピチュのグッバイ・ボーイ
http://www.longstaykansai.org/
ryokouki/okazakiyuko/nanbei/okazakinanbei.html
TVの世界遺産番組を偶然見ていた。1996年から放送している20年番組である。今日は20年間の世界遺産の変化を見るというコンセプトだった。ネパール・カトマンズの地震と元クマリ(初潮を迎えるまでの少女が神として崇められる。)の女性の話。モン・サン・ミッシェルをつなぐ橋が作られ、潮の流れが戻った話。キリマンジャロの氷河の減少。スペインの絶滅危惧種・オオヤマネコの復活など、なかなか面白い内容だった。

中でも、この番組の第1回放送で、マチュピチュのバスのヘアピンカーブが続く道をショートカットして、何度も「グッバイ~」と手を振る「グッバイ・ボーイ」の20年後には大いに興味を抱く。彼はなかなか有名で、トルコ・イスタンブールのクマ男とともに、”世界遺産に付随する人間国宝さん”みたいな存在である。今は、奥さんもいる村の警備員となっており、子供が出来たら、大事に保管しているグッバイ・ボーイの衣装を見せると語っていた。想定内の20年後でちょっと安心した次第。

…20年というと、かなりの年月である。私は37歳。35歳でアメリカに行ってハマり、ニューヨークに一人旅した頃である。今から思うと、海外に出て、向学心が一気に上がったように思う。その後、主なる学びの対象は何度も変化したが、それがまた意外に結びついていくものだ。世界は面白い。だからこそ、日本も面白い。まだまだ向学心は旺盛である。

チェルノブイリの祈りを読む。2

http://www.bcd-urbex.com/chernobyl-nuclear-power-plant-ukraine/
チェルノブイリの祈り(スベトラーナ・アレクシェービッチ著/岩波現代文庫/2011年6月16日発行)を読んでいると、その被爆の悲惨さに打ちのめされる。最初に、若い消防士の最後を看取った妻のインタビューが出てくる。「孤独な人間の声」と題されたものである。初期消火に携わった消防士の身に起こった体の変化。とてもそのまま引用できないほどのものだ。彼の死後、セロハン袋(透明な防水用)に入れられ、木の棺に納められ、さらにもうひとつの袋にくるまれ、亜鉛の棺にまるごと押し込められた。その後、亜鉛の棺はハンダ付され、上にコンクリート板が乗せられた。

「あなたのご主人は英雄であり、もう家族のものではない。国家的な人物で、国家のものなんですよ。」と言われ、モスクワの特別な墓地に埋葬されることになった。しかし、西側の特派員が押し寄せているので、2時間以上モスクワの環状道路を回ることになる。妻はヒステリー状態になったという。あっという間にされた埋葬時も、その後故郷に帰る際も、護衛がつき、宿泊したホテルのシーツなどはすぐポリ袋に入れられたのを見たという。「きっと燃やされるんでしょうね。」

全ての日本人が読むべき本だと私は思う。決して今年のノーベル文学賞だから、というのではない。原発の危険性だけでなく、国家・権力というものの恐ろしさを知っておくべきだと思うのだ。

2015年11月21日土曜日

チェルノブイリの祈りを読む。

チェルノブイリの祈り(スベトラーナ・アレクシェービッチ著/岩波現代文庫/2011年6月16日発行)をまだ読んでいる。あまりの救いのなさに、読むスピードはどうしても遅くなる。

今日エントリーしておきたいことは、政治がなにより優先されることの恐ろしさである。世界史Bで、重要な基軸として使わせてもらっている千葉大学の加藤先生の社会類型(2014年10月7日・13日、11月2日などのブログ参照)は、ソ連では、かなり顕著である。ソ連下のベラルーシの農村は、極めて中世的な「不自由な共同体」であったことがよくわかるのである。彼らは、原子力発電のしくみも、放射能の恐ろしさも、その防ぎ方も全く無知である。国の誇りである原発の近くに住んでいるという認識しかない。国が安全であると言った故に安全であると信じ込んでいた。

私にとって衝撃的な事実だったのは、爆発した原子炉の上に、ソ連国旗を立てるという、とんでもないことをやっていたことだ。3~4日で国旗はボロボロになり、また立て直すのだという。これにかかわるのは英雄的行為…。事故直後、メーデーの行進も予定どうり行われた。地元の党第一書記は、上部の指示に逆らうことなど考えられない。まさに、(フランクフルト学派の言う)道具としての理性。この行進の実施によって、どれだけの人命が失われたか。

ところで、今日の毎日新聞の社説に、韓国の慰安婦問題を扱った「帝国の慰安婦」の著者朴教授が、在宅起訴されたことについて書かれていた。元慰安婦から名誉毀損として告訴されソウル東部地検は、すでに慰安婦は性奴隷だったと証明されていると規定し、「学問の自由を逸脱した。」と結論づけた。もちろん、韓国の憲法は学問の自由を認めている。韓国における、この問題は極めて感情的かつ政治的であると。
…私も、「学問の自由」について、完全に主客逆転しているように思える。地検という法律家の結論とは信じがたい。

…国家をリヴァイアサンという(旧約聖書ヨブ記に出てくる)怪物に例えたのは、ホッブズである。国家(社会類型で言えば、支配階級である「自由な個人」、当時のソ連で言えばノーメンクラツーラ)の『政治』が優先されることこそ、リヴァイアサンのリヴァイアサンたる所以のように思えるのだ。

2015年11月20日金曜日

毎日 ボツワナで世界2位のダイヤ

http://www.asahi.com/articles/
ASHCM6RT0HCMUHBI02Y.html
毎日の夕刊に、ボツワナで操業するカナダのルカラ・ダイヤモンドが。1111カラットという世界第2位(1位は南アで発見され、英王室の王冠に使われている3106カラット)のダイヤモンドを発見したという。大きさは縦65mm、横56mm、高さ40mmで、ゴルフボールより一回り大きいらしい。

ナイジェリアのボコ・ハラムのテロなど、このところの一般紙のアフリカのニュースは、あまりいいものはない。久々のいいニュースだと思う。

…さて、このダイヤモンド、どうなるのだろうか。考えられるのは、オーナーが誰にも譲らず所持する可能性。次に、ちょっと危険だが、どこかで厳重に保管して展示して儲ける可能性。売るとなると、当然バイヤーの言い値からスタートになるはずだ。以前、エントリーした(2010年8月30日付ブログ参照)南アのダイヤモンド鉱山で学んだことだ。

…貧乏教師が、想像したところで何にもならないが、私としては、ボツワナ観光に一役かってほしいなと思う。ボツワナは、オカバンゴ湿原やカラハリ砂漠など観光資源も豊富だ。首都ハボローネの観光の目玉にするといいと思うのだが…。

2015年11月19日木曜日

新オリジナルゲームの実践(3)

新作ゲームの第3回目の授業である。前回は、機械と繊維製品をAチームが独占し、所持金でも首位をキープしたまま終わった。第4ゲームは、クリアー条件に繊維製品10が入るので、特にC国のクリアは厳しいと見ていた。そこで、昨日、国際会議になった場合の細かな規定をつくり、これも生徒に配ることにしたのだ。

まず、国際会議でクリアできなかった責任の所在を討議させる。
クリアできなかった国の責任なのか。あるいはそう追い込んだ国の責任なのか。
どちらにせよ、紛争になることをさける方途をまず提示した。①無償で援助する。②相互に納得できる条件をつけ援助する。これで平和解決できれば、問題なしである。
援助する国がなかったり、クリアできなかった国が援助を拒否した場合は紛争となることにした。

紛争になった場合、当事国(クリアできなかった国とその国が指摘した国、さらにどちらかに同調する国)は、ファシリテーターの私に紛争の費用として(秘密裏に)任意のMoneyを支払う。その比率で、戦闘力が決定する。たとえば、100M vs 200Mなら、1:2である。この比率にしたがって、当事国は、じゃんけん要員を出す。その勝ち抜き戦で残った国が勝利とする。

当然、そのMoneyは返却されないが、勝った国は、サイコロを振って、指定された見返りを得る。およそ、クリアできなかった国は、新たな資源をサイコロの数によって得る。追い込んだ国は、サイコロの目が1~4ならMoneyのみ。5・6なら、1~2ゲーム間その国を植民地化することが可能となるように設定した。つまり、追い込んだ国のメリットは1/3程度しかないようにしたわけだ。

紛争となると、現在経済発展している国はメリットが少ないわけで、冷静に見れば追い込む必要がないようにしたのだ。…が、体育科・武道科の生徒は、こういう場合スポーツ選手なので極めて好戦的だ。特に、ジリ貧のC国は、「戦争でしか現状を転換できない。」と判断したらしい。D国も、同調し、2カ国ともにクリアを諦めてしまった。一方、A国はB国と同盟を結び、それに備えている。

第4ゲームの終了時間となった。C国もD国も、援助を拒否し、断固戦うと主張した。相手国は共にB国を指定した。「?」追い込んだのは、A国なのだが…。「B国なら勝てるかも知れない。」この辺、実に面白い発想だ。「助太刀していいですかあ?」とA国。

と、いうわけで、次の時間、C国対B国+A国、D国対B国+A国の紛争が起こることになったのだった。じゃんけん対決だし、彼らがどれくらいの資金を出すかわからないし、C・Dが連合を組むかもしれない。必ずしもA・B国連合が有利とは言えない。

…デモクレイジー・シミュレーションもそうだったが、こういう争いを挿入することは、国際理解教育の世界では、あまり歓迎されない。だが、リアルに国際情勢を見ると、こういう展開になってしまうのだ。世界史は、そう教えている。

2015年11月18日水曜日

アリスの「セカンドライブ」発見

教務部長のH先生が、先日休みの日に本校の放送室の掃除をしていたら、古いレコードが多く見つかったらしい。H先生が「お宝ですよっ。」と言うので、見に行った。おお、吉田拓郎の「元気です」や井上陽水の「招待状のないショー」がある。レットツェッペリンⅡなんて洋楽もある。渋すぎる。シングルも、ミッシェル・ポルナレフの「シェリーに口づけ」なんて懐かしすぎるではないか。たしかに年齢限定ではあるが「お宝」に間違いない。

中でも私が注目したのが、アリスのセカンドライブのLPである。収録曲はSG(サイモンとガーファンクル)のカバーだったり、キャロルのカバー、クールファイブのカバーまである。青春の影とあったのでチューリップのカバーだと思ったが、調べてみるとこれはオリジナルだった。(笑)売れなかった時代のライブ版なのである。このLP、かなりのレアものではないか?とH先生と話し合っていたのだったが、帰宅して調べてみると800円から1500円くらいの値がついていた。それなりに流通しているようだった。残念。

私はアリスは初期が好き。阿倍野のアポロで歌っていた頃のアリスⅠ・Ⅱの時代が最高であると思っている。久しぶりに「明日への讃歌」や「愛の光」を口ずさんでしまったのだった。

このたくさんのレコードをどうするか?処分寸前のものであるが、私の意見はPTAにお願いして、来年の文化祭のバザーに出品してもらうという案。と、いっても売れる保証はないなあ。

2015年11月17日火曜日

新オリジナルゲームの実践(2)

第3ゲーム/C国のエージェントが
D国にA国のワインを売り込んでいる。
全員が注視しているところ。
月曜日の時間割なので、今日が新ゲームの実践2日目である。前回は始めてのことだったし、なかなかスムーズに進まなかったが、今回は第2・第3ゲームと進むことができた。生徒たちもこのゲームの意味をようやくわかってきたようである。

第1ゲーム終了時の状況、すなわち今日のスタート時点の状況。
A国:小麦80・ワイン40・乳製品20 670M
B国:小麦40・野菜40 490M
C国:乳製品50・野菜20 580M
D国:小麦120 乳製品10 620M

第2ゲームのクリア条件は小麦50・農産物(ワイン・野菜・乳製品)3種類で計30、である。ついにワインが完全なる比較優位となった。

ワインがこの仮想世界には40しかない。完全な比較優位、独占状態である。A国とB国が組んで結局C・D国をクリアできない状態に追い込んだ。クリアできない状態が2回となるとと国際会議をもつとだけ指示している。これを植民地化とC・D国は捉えたようだ。だが、持ち金を減らさないことを選んだようだ。かなりワインの値がつり上がったのだろう。で、前半戦、第2ゲーム終了時は次のようになった。

A国:小麦80・ワイン40・乳製品20・機械20・繊維製品20 840M
B国:小麦40・野菜40・ワイン10 340M
C国:乳製品50・野菜20 510M(クリアーできず)
D国:小麦120 乳製品10 740M(クリアーできず)

第3ゲームのクリア条件は小麦60・農産物(ワイン・野菜・乳製品)3種類で計40、である。必要な小麦も増える。

この回は凄い折衝となった。C・D国とも、クリアーを連続で逃すことはできない。ポイントとなったのはやはりワイン。面白いのは、A国が、C国のエージェントを雇い、D国に高値で売らせるというエゲツナイ方法をとったことだ。(南北貿易ゲームのようだ。笑)最後は連携してきたB国も巻き込んで大騒ぎになった。で、なんとか全ての国がクリアーした。現在の最終結果は以下のとおり。

A国:小麦80・ワイン40・乳製品20・機械40・繊維製品40 1110M
B国:小麦40・野菜40・ワイン10・乳製品10 440M
C国:乳製品50・野菜20 340M
D国:小麦120 乳製品10・ワイン20 670M

生徒は、機嫌よく頑張っている。野球部を中心にワイワイ盛り上がっている。A国の経済成長は著しい。「先生、次は機械と繊維製品がポイントになりそうですねえ。」と自信満々。案外、一番不利なD国が頑張っていたりする。次は木曜日である。ちょっと、方向性を変えようかな。(笑)

2015年11月16日月曜日

来年の国際理解教育学会の話

上越教育大学
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A
%E8%B6%8A%E6%95%99%E8%82%B2%E5
%A4%A7%E5%AD%A6
国際理解教育学会から会報が送られてきた。会長の藤原先生(同志社女子大学)の挨拶に、国際理解教育のパースペクティブ(透視図法的見方)において、4つの視点(1.グローバル、2.ナショナル、3.ローカル、4.パーソナル)があることを確認された上で、次のように述べられている。

「今年(2015年)は、節目の年であり、国際的にはポストESD(持続可能な開発のための教育)とMDGs(ミレニアム開発目標)にかわるSDGs(持続可能な開発目標)やGCED(グローバルシティズンシップ教育)が今後の教育目標として浮上しています。」

「4つの視点は、グローバル(世界)やナショナル(日本政府)の教育課題に振り回されるローカル(教育現場)やパーソナル(個人)を意味していません。ユネスコが①知るための学習、②なすための学習、③共に生きるための学習、④人間存在を深めるための学習の四本柱に加えて、ESD10年の間に⑤自己変容と社会変容のための学習を加えたように、むしろピラミッドの底辺から、すなわち、教員々人が自己の変革や社会の変革を意識した地平から、グローバルな動き、ナショナルな政策を批判的に吟味することを意味していると考えるものです。」

…なるほどである。私が現役であるかぎり、この学会で研究発表を続けていこうと秘かに決意していることの意味を明確にしていただいたような気がする。藤原先生とは、(前任校で)教え子を送り込んだりして旧知なのだが、最近は懇親会にも出ず、第二日目の午前中の研究発表をして、午後の全体会にも出席せず、スタコラコラサッサと下阪するので、長くお会いしていない。

事務局から来年は6月17日から19日、上越教育大学で研究大会を開催するとあった。上越教育大学は新潟の直江津が最寄り駅らしい。調べてみると、京都と直江津間に夜行バスが運行していることがわかった。かなりハードだが、研究発表後、新潟の親友を訪ね、三条からまた違う会社の夜行バスに乗れば、月曜日の登校時間になんとか間に合いそうである。

2015年11月15日日曜日

赤道ギニアの意外

番組HP から
一昨日のTVで、千原せいじが、赤道ギニアを訪れていた。赤道ギニアというと、独裁者の国、石油のレントで1人あたりのGDPは先進国並みながら、HDI(人間開発指数)では136位という、信じられない国だ。いかに一部の権力者に富が集中しているかがわかる。極めて印象の悪い国なのである。

アフリカを多く旅している千原せいじは、意外なことを発見する。治安が良い。インフラがかなり充実している。そのインフラもビルの数より、道のタイルが剥がれていないことをせいじは発見する。彼のキャラは好きでないが、なかなか見直した次第。

ちなみに彼が足を踏み入れたのは、首都マラボがあるピオカ島の方である。大陸側の様子はわかならいのだが、赤道ギニアの意外な一面を見たような気がする。やはり、百聞は一見に如かずである。

2015年11月14日土曜日

大阪 BLUES&SOUL LIVEに行く。

土曜日なのだが、今日は中学生への授業公開と体験入学の日であった。この日に向かって、教務部としては準備を重ねてきた。概ねうまくいったのではないかと思う。教務部長のH先生と、参謀役のS先生の仕事量はかなりのものだった。若手のM先生やA先生も影の仕事を黙々とやってくれた。私は、ご隠居というかご意見番として、だいたいその間を埋めるような仕事をしていた。(笑)

で、以前から今日は早めに帰らせてもらうことになっていた。15時、教務の運営の仕事は終了しているので、快諾してもらっていた。妻と、中之島の中央公会堂に行くことになっていたのである。上田正樹、憂歌兄弟、大西ユカリが出演する「これが大阪!BLUES&SOUL 奇跡の軌跡! THE LIVE SHOW!」である。

最初、ヨモギという若い女性のデュエットが出てきた。爽やかで案外良かったのだ。私としては古い曲でセルスターズの「悪魔がにくい」がよかった。(笑)大西ユカリのステージも、泥臭くてなかなか良かった。ただ、ミキサーが下手なのか、公会堂の音響効果が悪いのか、座席が一番下手側だったので、スピーカーの位置が悪かったのか、ボーカルとバックの音声バランスがあまりに悪いかった。これは残念。

このミキシングの問題は、憂歌兄弟にも引き継がれていて、木村の天使のダミ声がよく聞き取れない。とはいえ、さすが憂歌兄弟。素晴らしいステージだった。なにより、私の大好きな「シカゴバウンド」を生で聴けた。うーん、イイのだ。最高なのだ。

最後は、上田正樹である。大ファンでありながら、本当に久しぶりのLIVEだ。ドラムは、サウス トゥサスス以来の仲間の五郎ちゃんである。いい。すごくいいのである。キー坊(上田正樹)の弟子となった女性シンガーも登場した。『「ぼちぼちいこか』の古いナンバーもやってくれた。「大阪に出てきてから」ホント、久しぶりに聞いた。現在のキー坊がソウルフルに歌うと、こうなるのだ。痺れるのである。とにかく、キー坊のオーラは凄いのだ。

ところで、今日の中央公会堂に集った聴衆は、私とほぼ同世代の御夫婦という感じ。これまでなら、キー坊のソウルに踊り狂うのだが、かなり高齢化が進んでいるのでちょっと無理という感じ。私も、今日の仕事で疲れ果てていて、立ち上がることさえできなかった。(笑)

最後にみんなでアンコールに応えてくれた。『ぼちぼちいこか』から、「梅田からナンバまで」を木村や、大西ユカリもセッションして歌ってくれた。いやあ、満足。満足。

16:30から20:30まで、大迫力のLIVEだった。大阪府のプロジェクトの1つだということで、2400円助成されて、チケット代は3600円。大いに得した気分だ。

2015年11月13日金曜日

全権委任法が日本で可決した?

全権委任法
憲法53条に、いずれかの総議員の4分の1以上の要求があれば臨時国会の召集を内閣は決定しなければならないとある。政府は野党の要求を受けながら召集しなかった。これは、法学部出身でない素人の私にもわかる「憲法違反」である。首相の外遊日程が詰まっていようといまいと、明らかな「憲法違反」である。

安保法案でも、憲法違反論議が起こったが、こちらの方がはるかにわかりやすい。いつ、「全権委任法」が日本で可決したのだろうか?ちょうどこれから世界史では、早いクラスでは、ヒトラーの独裁にいたる経過を教える。この辺は、きっちりと教えておかなければならないと思っている。世界史を学ぶ意義中の意義であると私は思う。

33%の得票率しかなかったナチスは、共産党を追い落とすために、ゲーリングを首都の治安の責任者に置いた上で、国会議事堂放火事件を起こし、逮捕していく。その上で、さらに国会を解散、選挙で得票を伸ばし、非常事態における時限立法だと保守政党を丸め込んで、「全権委任法」を可決させる。立法権を内閣に与え、政府立法は憲法に優先するという、とんでもない法律だ。

民主主義だからといって、安心してはいけない。世界史は、民主主義という土台からヒトラーの独裁を生んでいる。我が日本の首相は、小選挙区制を武器に、全権委任法が可決されたような行動をとっている。極めて危険だと私は思うのだが…。

2015年11月12日木曜日

新オリジナルゲームの実践(1)

農産物カードの例
日本史演習という選択科目で、新ゲームの実践を始めた。今回は、開発教育という枠をこえて、自由貿易と保護貿易を体感できるような経済シミュレーションゲームである。

3年生の選択科目なので、生徒数は22人。4チームに分けて、4つの国の経済を相談しながら運営する。最初に500M(Money)を渡すのは平等だが、生産できるモノは異なるという設定だ。

A国:小麦80・ワイン40
B国:小麦40・野菜40
C国:乳製品50・野菜20
D国:小麦120

毎回、クリア条件を立てる。最初は、各国とも小麦50・農産物(ワイン・野菜・乳製品)を2種類計20である。すなわち、自国の生産物にないものを貿易で得なければならないというわけだ。価格は、互の折衝で決める。順位は持ち金の大小で決定し、ボーナスを与えられる。

1位:小麦20・ワイン20・野菜20・乳製品20のうち、1つを選択し、次回から自国の生産物に入れることができる。100MをGET。
2位:小麦10・ワイン10・野菜10・乳製品10のうち、1つを選択し、次回から自国の生産物に入れることができる。100MをGET
3位:100MをGET。4位:50MをGET。

第2回は、クリア条件が変わる。ボーナスで自国の生産物が増え、所持金が増えると有利になるのは当然だ。

さて、実践。このゲームの意味を考えさせるために、少し時間をとって、チームごとに国を選ばせた。面白かったのは、Cを希望するチームが2つ出たことだ。おそらくAをみんな希望すると思っていたのだが…。いろいろ意見が出ていたが、結局ドラフト会議みたいになって、ジャンケンで決定。

次にどうするか、各チームで討議。D国は、A国との貿易を行わないよう説得している。面白い動きだ。あえて、最も厳しそうなところからチャレンジしたようだ。意外。結局、時間間際に慌てて売買することになった。2カ国(A・D)が黒字、B・Cが赤字となった。ボーナスを渡し、次回に繋いでいくことになった。Aは、乳製品20、Dは乳製品10をGETした。私はてっきりワインにすると思ったのだが…。

さてさて、次回は生徒たちは「比較優位」という概念に気づいてくれるだろうか。

2015年11月11日水曜日

毎日 新語・流行語大賞考

http://singo.jiyu.co.jp/
毎日の朝刊に今年の新語・流行語大賞のノミネート50語の一覧が載っていた。昨日TVでやっていたけれど、じっくり50語を見比べてみることにした。安保法案関係が多い。

毎日の紙面では「戦争法案」というのが目立つが、これはかなりプロパガンダ的なコトバだと私は思う。選ばれるべきではない.。
それより、「早く質問しろよ」の方がいい。この語は、政府が「ていねいに説明する」といいながら、全く反対の行動をとった事実を端的に象徴している。大賞の授賞式に本人に来てもらい、是非ともコメントをもらいたいところだ。

もうひとつ、「粛々と」というのがある。これも、オキナワに対して、官房長官が使った、非常に不愉快なコトバだ。現在の日本の病巣を象徴している官僚語。これも是非、授賞式に本人を呼んで、コメントをもらいたい。

最後に「爆買い」。ちょうど、TVで中国の食品のエゲツナイ偽装問題をやっていた。古タイヤでタピオカを作っているとか…。凄いな。食の安全など全く考えないモラル以前の恐ろしい話だ。中国の旅行者が日本で、安全な製品を爆買いする理由の一つであるらしい。中国本国のPL法の担当者でも呼んで、授賞式でコメントをもらったらどうだろう。

2015年11月10日火曜日

奈良ドリームランドのコト

http://drkssk27.web.fc2.com/zekkyou/nara/nara.html
私が子供の頃、昭和30年代後半から40年代、関西にはわりと「遊園地」がたくさんあった。宝塚ファミリーランド(阪急)、阪神パーク(阪神)、みさき公園(南海)、ひらかたパーク(京阪)、あやめ池遊園(近鉄)…。私鉄が大いに競っていた。そんな中で、最も高級だったのが、奈良のドリームランドだった。

一応、ディズニーランドという凄い遊園地がアメリカにあって、これはそのバッタモン(偽物の意)だということは、子供心に知っていたが、当時はアメリカに行くなどというのは夢のまた夢で、一生行けないだろうと確信していた。ちなみにアメリカの入口である「夢のハワイ」にいくには、アップダウンクイズで10問連続正解するしかないと、殆どの庶民の子供は思っていたはずだ。(笑)したがって、ドリームランドは、立派なバッタモンだった。

私は一度だけ、両親に連れて行ってもらった記憶がある。完全に”ハレ”の時間であり空間であった。中でも、未来の国の潜水艦には、異常な興奮を覚えた。今から思うと、実際に潜っていないのだが、それでも、艦内の窓から水中を見ることができて大満足した。

奈良のドリームランドが閉園になり、廃墟化していることは、何度か奈良にドライブした際に前を通って知っていた。そのドリームランド、今日の競売でなんとか最低価格で購入した会社が現れたらしい。複雑な気持ちであるのだが、少なくとも、あの廃墟のままなのは、いたたまれない。どう変わろうとも、なんとか再開発してもらう方が良い。

ちなみに、私は東京のディズニーランドに行ったことはない。カリフォルニアにも何度か行ったが、ディズニーランドには足を伸ばす気も起こらなかった。USJも、学校行事で2度行ったが、仕事である。自分で行ったことがないし、行こうとは思わない。

子供の頃の奈良ドリームランドの興奮は、未だ我が精神の奥底に残っているわけだ。”最高だったで、奈良ドリームランド”

2015年11月9日月曜日

ホロコーストの人権学習教材(3)

今月25日に行う、ホロコーストの人権学習教材がほぼ完成した。最も迷ったのは、ホロコーストの歴史的な事実、特にアウシュビッツ・ビルケナウの写真を示した後、「そして…今」と繋いでからだ。ここからじっくり考えていたのだった。

結局、ビルケナウの写真をバックに「そして今も。」と繋ぎ、こういう文言を入れた。「共生を拒否されている人々は世界中に存在する。」

アウシュビッツで、日本人ガイドの中谷さんが、「アウシュビッツは、決して過去の問題ではないのです。それを常に考える人間でありたいと思っています。」と言われてていたが、それを自分なりのコトバで表現したわけだ。

次に、共生を拒否されている人々を、パワーポイントのアニメーション機能を使えるだけ使って、(縦と横に文字を並べる)NHKの「映像の20世紀」のタイトル風に表現することにした。

シリア難民。クルド。ロヒンギャ。チェチェン。ウクライナ。ナイジェリア。チベット。ネパール難民。ウイグル。ソマリア。チェルノブイリ。アボリジニ。中央アフリカ。アメリカ合衆国の黒人とネイティブアメリカン。最後に、パレスチナ。

何度も何度も考えて、絞り出した人々の名前(国・地域)である。もちろんが、これが正解だとは思っていない。現在の私の実相でしかない。当日、時間があればそれぞれを詳しく紹介したいが、時間がなければ、ともかくも生徒たちに強く印象付けたいと思っている。

この画面の後、「共生を拒否されている人々は世界中に存在する。」を、同じ位置に残して、こう繋げた。「そして、この日本にも」  「あなたの周囲にはいませんか?」「ホロコーストは過去の話ではありません。」という画面をもってきた。

最終画面は、もう一度、アウシュビッツのガス室の爪痕の写真をもってきた。アニメーションでこの画像が消えると、ヘブライ語のシャローム(We all wish for peace)が現れる。こういうカタチで括ってみた。

今回の教材、私としては、一応満足している。

2015年11月8日日曜日

月刊アフリカニュースを読む。

パリ13区には中華街があるらしい http://expatedna.com/
2013/02/11/on-family-tradition-and-the-year-of-the-snake/
先日WEBでアフリカの話題をサーチしていいたら、「一般社団法人アフリカ協会」のHPを見つけた。ここに月刊のアフリカ情報があって、なかなか面白い。もちろん、新聞等で周知のこともあるけれども、アンテナの一つとしてこれからも重宝しそうだ。10月15日付のニュースで最も面白かったのが、在フランス・パリ13区に住むコートジボワール生まれのブルキナファソ人への吉田さんというビジネスコンサルタントのインタヴュー記事。

彼は、以前から豊かなフランスに憧れ、兄から送られた航空券でパリに来た。しかし、理想とはだいぶ違ったようだ。幸い兄の助けもあり、故国では自動車整備の仕事をしていたが、公務員となり、滞在している。そういう(特別な学歴もない、一般的な)ディアスポラの1人なわけだ。

彼は、フランスのアフリカ人について、(中国人やスリランカ人のような)連帯感がないので協力してプロジェクトを成功させることができないという。また、(成功者に対して)嫉妬深く長期的な視点がないと言う。また故国に帰ると、怠慢で理想しか見ていない、と言っている。
http://www.africasociety.or.jp/africanews/africanews_no36.pdf

…フツーの発言に見えるが、実に興味深い記事だと私は思う。フランスでは、アフリカ人の連帯がないということはないのだろうが、協力して起業していくというところまで発展しない、ということ。また嫉妬深く長期的な視点がないということ、これらはアフリカの「情の経済」のフランスでの姿ではないかと考えてしまう。アフリカでは、なんとか日々を生き抜くために「情の経済」は有効であるが、アフリカ的な富者は貧者を支える義務を負うという徳は、フランスという資本主義社会では足かせになっている、と言えるのかもしれない。

…おそらく中国人の情の経済的な部分は、宗家的なものであるだろうと思う。アフリカのそれとは若干違うような気がする。ともあれ、彼の感慨は、アフリカとフランスの違いを大きく浮き上がらせているように思うのだ。

2015年11月7日土曜日

チェルノブイリからの贈り物

エレサレムの治安悪化を避けて、ベラルーシとウクライナを回っている息子から、荷物が先ほど届いた。

チェルノブイリのダークツアーのオプショナルで、ハードロック・カフェ(もちろんバッタモノである。)のTシャツとキャップが買えるらしく、先日「お父さん、いるかあ?」と聞いてきたのだ。答えはもちろん、イエスである。

と、いうわけでこのところ、チェルノブイリの本を読んでいる。今、読んでいるのは、スベトラーナ・アレクシエービッチ氏の「チェルノブイリの祈り」(岩波現代文庫)である。

今年、彼女がノーベル文学賞を受けたから、といった理由ではなく、妻が息子から借りて読んでいたのをまた貸ししてもらったが故である。この本、ジャーナリストとして、彼女が聞き書したものを集めたノンフィクションである。凄い内容なので、改めてエントリーしたいと思う。故国ベラルーシでは、出版できていないらしい。それも凄い話であると思う。

追記(18時33分):妻が息子にメールを送ったら、オデッサに着いたそうだ。「今度は戦艦ポチョムキンやな。」と言うと、妻は「?」。(オデッサは、日露戦争時、第1次ロシア革命の時、軍の反乱があった所。エイゼンシュタインの映画で有名だ。)息子は黒海まで南下してきたわけだ。

2015年11月6日金曜日

勤続35年の「心・技・体」

私は今年、勤続35年らしい。大学入学も現役、教員採用も新卒採用なので、57歳で、というのは最短である。(ちょっと自慢。)

今日は、11月だというのに、気温が25℃もあった。おまけに3年生の教室は、耐震工事に伴う塗装工事が窓側で行われていて、窓を開けないでという指示が事務室から出ていた。教室は密室状態である。まったくもってエライ1日であった。

ちょうど、世界史Bの授業は、WWⅠの東部戦線消滅=ロシア革命へと入るのだが、せっかくなので社会主義入門講座という設定だった。(若い人に聞くと最近は、経済学部でもマル経は不人気だそうだ。だからこそ、教えておきたい。ちなみに私は左翼のヒトではない。ソ連を知らずに育った1997年生まれの今の3年生には、実感としてわかりにくいが故に余計教えておく必要があると思うのだ。)社会主義は、”資本主義のアンチテーゼ”である、ということをまず説明する。資本主義の説明だけで、本来はたいぶかかるのだが、シンプルに金儲けは悪ではないこと、ほんとんどのものが商品(金で買えるモノ)であることを語る。次にアンチ(反)の説明。テーゼは、案外コトバとしては流通している。エヴァンゲリオン様サマである。(笑)もう、これだけで汗が吹き出る。

その後、資本主義の矛盾(貧富の差の拡大・恐慌の発生・寡占)と社会主義の基本的政策(私有財産制の否定・計画経済・生産手段の社会的所有)を面白おかしく説明する。ここでも、一汗。これらの成果は、空想的社会主義の成果であることを述べ、エンゲルスの「空想より科学へ」というパンフのタイトルの説明。マルクスの科学的社会主義について、”科学的”という意味も説明する。ここでも一汗。

いよいよ、最重要の話である。マルクスの剰余価値説である。これまで何度授業で取り上げたことだろう。要するに、金持ちはますます金持ちに、労働者は安い賃金で働かされている、というコトを、ラーメンの材料(G)と商品としてのラーメン(W)をもとに、極めてシンプルに語ると高校生にはわかりやすい。生徒にラーメンの食材は一食いくらくらいになるか「麺はいくらくらい?」「メンマは?」「スープに何いれる?」と聞きながら、黒板で計算する。80円のクラスもあるし、120円のクラスもあった。ラーメンは、一杯600円のクラスも、700円のクラスもある。生徒の中から店長と社長を選ぶ。店長の月給を社長に決めさせるのも盛り上げのコツ。15万円のクラスもあれば、30万円のクラスもある。で、GーWーG’G'-Gを計算する。すると、いかに店長が価値をうみながら、安い給料で働いているかがわかるわけだ。本当は、店の賃貸料やその他の経費がかかるのだが、ここはシンプルにいく。みんな、なるほど、と納得する。私の汗は滝のようである。

さらに、唯物史観。ヘーゲルの弁証法から話を始める。これも様々な例を出して盛り上げる。もうこの辺で、ヘトヘトである。残り15分完全燃焼。(笑)経済が世界を動かしているというのは世界史でやってきたので生徒は納得しやすい。「と、いうわけで、マルクスは、資本主義を科学的に分析したわけだ。」とまとめると、見事にチャイムが鳴る。うーん、ボクサーには3分という体内時計があるというが、勤続35年の私にも50分の体内時計があるわけだ。今日はこんなことを3回繰り返した。

なにか、今年は、今までで一番いい授業をしているような実感がある。しかし、例年以上に体力の消耗が激しい。心・技・体のうち、技は今が一番かもしれないが、体に問題が出ているのだった。

2015年11月5日木曜日

佐藤優・池上彰「新・戦争論」 Ⅲ

サイクスピコ協定 地図
http://www.stripes.com/news/
sykes-picot-agreement-line-in
-the-sand-still-shapes-middle-east-1.289723
佐藤優・池上彰「新・戦争論」のエントリーを続けたい。いま話題のシリアの話である。アサド大統領が所属する「アラウィ派」についてである。日本では、これをシーア派であるとさrているけれども、1974年、レバノンのシーア派の認証を受けての話であって、「アリーに従う:アラウィ」という名前をもつものの、輪廻転生説をとる点で、かなり異質なイスラムなのである。さらに北西部地域の被差別民の宗教であったという事実だ。なぜアラウィ派が政権を握っているのか、というと1918年、サイクスピコ協定で、フランスがシリアを支配するのに有効だと考えたからである。現地の行政、警察、そして秘密警察までアラウィ派に任せたのである。多数派に統治させると独立運動などを起こしかねない、少数派ならフランスの依存から抜け出せないだろうというわけだ。

…こういう、少数派による植民地支配体制をフランス系(ベルギーなども含む)は特に好む。被支配層から憎まれるのは、現地人の支配層なわけで、宗主国はフィクサーとなり得るわけだ。

現アサド大統領は、イギリス留学経験もある眼科医のインテリで、兄が事故死した故に父親の後継にされた。宗教対立をのりこえようとスンニ派の夫人を迎えたものの、うまくいかなかった。しかし、シリアには反体制派は存在しなかった。ムスリム同胞団、2万人はすでに父親に皆殺しにされていたのだ。父親の負債も大きい。アラブの春がシリアにも波及してきて、スンニ派が騒ぎ出した。フランスやイギリスは、なんとか反体制派の集団がいないと都合が悪いと、素行の悪そうな青年に金を渡し軍服を着せた。スンニ派の決起というわけだ。しかし、これを弾圧すると、軍の中から自国民を殺すのは嫌だと離反したのが「自由シリア軍」で、政府軍とドロドロの内戦状態となったわけである。

…アラブの春というイスラム下の民主主義という、どうにも不揃いな運動が完全に破綻したといってよいわけだが、結局のところ、先進国のイスラムへの無理解からきているように思う。

…フランスは、過去の責任をもっと問われていもいいのではないか、などと思ってしまうのだ。

2015年11月4日水曜日

佐藤優・池上彰「新・戦争論」 Ⅱ

佐藤優・池上彰「新・戦争論」のエントリーを続けたい。教科書にはない重要な視点があるからだ。

イスラエルのネタニヤフ首相の官房長だった人物のある論。「国際情勢の変化を見るときは、肝値持ちの動きを見る。最近になって格差が広がったと言うが、昔から人口の5%の人間に富は偏在していた。冷戦の間は、共産主義に対抗するために、その5%の人間が、国家による富の再分配に賛成していたが、冷戦後はそういうことに関心をもたなくなった。今やその5%の格差がうんと広がり、ビル・ゲイツの資産はヨーロッパ諸国の予算を軽く上回っているし、アフリカ諸国のGDPより大きい。こんなことはかつてなかった。彼らは自分たちの儲けの半分を吐き出さないと潰されることを経験則でわかっている。そこで、自分たちのつくったファンドで、慈善基金という名で富の再分配をしている。ダイレクトに社会に富を還元するパイプをつくったわけだ。アベノミクスは、政府介入策だが、我々はあまり関心がない。金融政策や財政政策といったって、世界の富は、国家を迂回して動いている。」つまり、国家が空洞化しているという論だ。

…鋭い視点である。国家の空洞化。ドゥルーズが指摘していた、ポストモダンのコードそのものであるである。近代国家のリゾーム化。

また、彼はこんな論も。「世の中には、旧来型の戦争観をもつ国がある。戦勝の勝者には、歩留まりはいろいろだが、戦利品を得る権利がある。そう思っているのが、ロシアであり中国であり、イランだ。ウクライナもそうだ。民主主義国は、極力戦争を回避して外交によって解決しようとする。ところが、戦利品が獲れるという発想をもつ国は本気で戦争をやろうとする。すると、短期的には、戦争をやる覚悟をもっている国の方が、実力以上の分配を得る。これが困るところである。」こういうものの見方や分析は、なかなか活字にならないし、モサドやロシアの対外諜報庁、イギリスの諜報局などくらいしか出てこないらしい。佐藤優の言う、まさに新帝国主義の方程式であるわけだ。

…ASEANの国防相会議は、ついに共同宣言を見送った。中国の「仁」の無さには呆れるほどだが、これが新帝国主義の姿なのだ。もし、米軍が本気で怒ったら、一度は引くだろうが、またそぞろ埋め立てをするんだろうなあ。嫌な世の中である。本書の最後には、その嫌な時代に生きていることを認識することが説かれている。なるほどなあ、と思う。

2015年11月3日火曜日

文化の日に「道の駅」に行く。

文化の日である。昨日は、11月らしくだいぶ気温が落ちてきたのだが、相変わらず授業が終わると汗だくである。一所懸命にやってしまうからだと思うのだが、体調が芳しくないのかも、とも思う。

朝から、妻が「道の駅に行こう。」と言い出した。妻は、道の駅が大好き。新鮮な野菜を買っていると実に幸せそうだ。「ソフトクリームを食べに行こう。運転は私がするから。」と、ソフトクリームにつられてしまった。(笑)我が家から、最も近い道の駅は、奈良県の平群(へぐり)である。

秋の味覚はやはり柿である。富有柿。実は、私の大好物。こそっと買い物かごにもうひと袋忍ばせたりする。(笑)”ひょうたんかぼちゃ”という変な野菜があった。妻に聞くと美味しいらしい。何度も買っているらしいのだが、私には「初耳学」である。(笑)

帰宅して、疲れがどっと出た。長い昼寝をしてしまった。今晩も寝つきが悪そうだ。明日の授業に影響がでなければいいが。

2015年11月2日月曜日

佐藤優・池上彰「新・戦争論」

イスラエルの無人機 ヘロン
「大世界史」を読み終えたので、その前に発行された佐藤優と池上彰の「新・戦争論」(文春新書・昨年11月20日発行)を読んでいる。順序が逆なのだが、先に「大世界史」を読んでしまったので、仕方がない。(笑)

まず、なにより衝撃的だったのが、佐藤優によるイスラエルの無人機の話である。アメリカ製の無人機の1/10の価格で、しかも小回りが利く。個別の家や個別の人間を攻撃するようにきめ細かに設計されている。標的の人間の顔写真を認識して、低空を飛び、標的を発見すると、ピーンと五寸釘を飛ばし、眉間に当てて顔が綺麗なまま殺すことが可能だという。イスラムの人々の間では、アメリカ製無人機のようにミサイル攻撃して爆殺してしまうと、その人間は死んだとは思われない。死体がなければならないのだという。ガザのハマスの指導者を、無人機が攻撃し始めた途端に停戦したという。ハマスの幹部もかなりこの無人機を恐れているわけだ。

…凄いな。五寸釘を眉間に打ち込むというのが怖い。だが、このイスラエルの無人機の存在意義は、簡単に打ち消せない。関係のない市井の人々を無差別には殺さないところは評価できるわけだ。同時にそこにいたる世界屈指のインテリジェンス能力を誇るモサドの存在抜きには語れないと私などは思うのだが…。とにかく、衝撃的な話だった。

http://toyokeizai.net/articles/-/60803

2015年11月1日日曜日

佐藤優「大世界史」のドイツ観

http://www.automobilemag.com/features/news
/0911_porsche_and_volkswagen_what_happened/
佐藤優と池上彰の「大世界史」から、少しドイツの意外な話をエントリーしておきたい。

ドイツの生産性は日本よりはるかに高い。早くから会社について、始業時間きっかりにパソコンの電源を入れる。集中して仕事し、12時きっかりにやめる。1時から5時までも同様。パッとやめて「はいさようなら。」機械的に正確。ここにドイツの強さの秘密がある。しかし、意外なことにバカンスの日数を調べてみるとフランスより多い。ドイツ人は、とても合理的に物事を考える。生活は質素で、夕食もハムとソーセージとチーズとパンだけ。火を使う料理はしない。

楽しみはガーデニングとレンガを積み上げて自分の家を建てること。貯金で利息がつくのが楽しみの人が多く、ブランドの服を買うなどということには重きを置かない。その代わり、食器や家具には凝る。イケアみたいな店に一週間ぐらいかよって、どのテーブルを買おうかと飽きずに見ているという。したがって、こういうライフスタイル故に内需の拡大は期待できない。産業は輸出に頼るしかない。外需頼りというのがドイツの問題である、とのこと。

イスラエルには、建国初期に大勢のドイツ系ユダヤ人が移民してきて、国の基礎を築いたからしっかりしているという説がある。ハーバーマスなどが言っているが、戦後のドイツは、それまであった国の重要な要素を半分失ってしまった。もともと土着のドイツ人知識人とユダヤ人知識人によってつくられた国だったのに、ユダヤ系の部分を失ってしまったという。

エリック・ホブズボームの『20世紀の歴史』には、1914年のWWⅠが始まりで1991年のソ連崩壊が終焉で「短い20世紀」だと書かれている。これを「ドイツの世紀」と読んでいる。ドイツという新興の帝国主義国をいかに封じ込めるか、そのために世界は必死になった。ソ連という国家もその過程でできた。WWⅠとWWⅡは、ひとつながりの「20世紀の31年戦争」とみなすべきで、結局のところドイツを封じ込めることはできなかった、という見方である。

またジョージ・フリードマンの『新・100年予測』でも、ドイツは自国の構造的な問題に対処しなくてはならない。問題とは輸出への過度な依存である。内需の拡大も難しい。ドイツとしては、ロシアやラテンアメリカ、アフリカの新興国と経済的関係を強める(中国とは、外需を求めるという意味で同じなので手を握れない。)道を模索せざるを得ないが、ロシアは経済と安全保障をどうしても結びつけて考える。ドイツがウクライナやベラルーシに対するロシアの行動をどう解決していかが問われていく。現在のウクライナの問題をこういう視点から捉えるべきだと、佐藤優と池上彰は説いている。

…高校の地理や歴史では、こういうドイツの”外需頼り”の構造やイスラエルの構造を教えることはない。意外に重要な視点だと思う。