2017年6月17日土曜日

エリトリア難民

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「シリア難民」を読んでいて、最初に衝撃を受けるのが、エリトリアの話である。エリトリアは、エチオピアから独立した紅海沿岸の国である。昔、旅行人が発行していた「アフリカ大陸37ヶ国ガイド」(99年発行)では、エリトリアは治安も良く、かなり良いイメージで書かれていたのだが、今やどんでもない独裁国家になっているようだ。

エチオピアをはじめとした隣国との紛争の歴史から、再び戦争になると誇張され、憲法不存在、司法制度の崩壊、そして無期限のナショナルサービスを正当化している。このナショナルサービスというのは、男女を問わず16歳~17歳以上の国民の全人生を政府が管理するエリトリア特有の制度で、人々が国を逃げ出す最大の原因になっている。兵役は、学校の最終年から一生続く。著者がインタビューしたアダム君は14歳で家族の中での最年長男性となったため、学校をやめ家族の土地を耕していた。学校をやめた者は外出許可証を失う。ある日彼は外出先で逮捕され、軍に送られた。暴力をふるわれ奴隷のように働かされた。半年後逃げ帰ったが、再び逮捕され裁判なしで三ヶ月拘留、再び兵役に就かされた。16歳でイタリアにたどり着くまで、2度刑務所に送られ3度少年兵となった。

「(エリトリア)国民はまるで政府の奴隷だ。」と24歳の男性は言った。彼もまた徴集兵で、「国全体が大きな刑務所のようなものだ。だから逃げるんだ。」徴集兵には、おおむね日本円に直すと3600円から5490円ほどの給料が支払われるが、少なすぎて収入とは呼べないし、これと引き替えに一切の選択の自由を奪われる。

「ナショナルサービスは、独立当初新しい国を防衛すること、戦争で疲弊したインフラと経済を再建するための労働力の確保が目的で、軍事的側面、社会的側面、文化的側面があった。しかしそれが(当初1.5年だったのが)無期限となり、制度が乱用された。」(元エリトリア自由戦士で元中央銀行総裁・EU大使・エリトリア唯一の大学総長などを歴任したウェルデ・ギオルギス氏/2006年亡命のインタビュー)
http://polandball.blog.fc2.com/blog-entry-1743.html
徴集兵たちは、石の切り出し、木材の切り出し、道路掃除など政府の仕事で奴隷のように使われる。試験の結果が良く文民業務につけても夜は軍事作業に従事しなければならない。22歳の教師だったメハリ氏は、「学校も無法地帯だった。経験豊かな教師は国から逃げ出し、徴集兵の教師に学生は敬意を払わなかった、彼らの目的は(前述の)外出許可証だけで、卒業しても徴兵されるわけで誰も勉強したがらなかった。」という。…これでは国作りは全く進まない。

…エリトリアでは、想像だにできない人権侵害が行われている。国連も調査を行い、北朝鮮を抜いて、世界最低の人権状況だと報告している。だが、その報告は活かされていない。国際社会も旧宗主国イタリアも何もしていない。この本の冒頭から、タイトルに付記された「人類に突きつけられた21世紀最悪の難問」を、文字通り突きつけられたと感じるのである。上のポーランドボールの画像は「エリトリアはまじでイカれている」という作品。ちなみにイカれているのは独裁政権を意味する。エリトリア難民がイカれているのではない。まともだから逃げ出すのである。誤解の無きよう。
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