2017年11月15日水曜日

帝国の復興と啓蒙の未来(2)

http://www.gregorius.jp/presentation/page_79.html
中田考氏の「帝国の復興と啓蒙の未来」のエントリー続編である。今回は、十字軍パラダイムについて。現在の社会をリードしているのはヨーロッパ(特に西欧)だが、昨日エントリーしたフランスのベストセラー作家の「服従」という作品に見られるように、イスラーム・コンプレックスがある。

イスラームはトラウマである。西欧によるイスラーム理解の歪みは単なる無知ではない。イスラームに自己の内にある譜のイメージを投影することで自己イメージを護ろうとしている、というのが中田氏の言うイスラーム・コンプレックスである。

西欧思想は、ヘブライズムとヘレニズムを二大源流としている。私も今まで倫理の授業でそう教えてきたが、イスラームこそが、ヘブライズムとヘレニズムの正統な継承者はイスラームだと中田氏は説く。これは、確かにその通りである。アブラハムを始祖とする一神教はユダヤ教・キリスト教・イスラム教を生んだ。これがヘブライズムである。ギリシア哲学を中心とする合理的精神はヘレニズムと呼ばれるが、その学問の中心地は、エジプトのアレクサンドリアであり、東ローマの正教世界からイスラームの世界に編入されている。一方、西ローマ帝国は早く滅び、ラテン語を中心としたカトリック化する中で、ヘレニズムは忘れられた。西欧のルネサンスは、イスラーム世界でアラビア語化されていたヘレニズムを十字軍以後再認識したにすぎない、というわけだ。これは、日本の学校であまり教えない厳然とした事実である。

十字軍パラダイムとは、ヨーロッパ・キリスト教世界とイスラームの対立を殊更に取り上げて絶対化、固定化させ、キリスト教同士の量的にも質的にもはるかに凄惨な相互殺戮の歴史の事実から目を逸らさせ、平和なヨーロッパと好戦的なイスラームという誤った自他イメージを心の中に植え付けるイデオロギーなのである。

この十字軍パラダイム、実に面白い。EJU後に今年も哲学講義をする予定なので、さっそく使わせてもらおうと思う。マレー系の学生は少し喜ぶと思う。

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